2024年3月5日火曜日

内陸部のイソヒヨドリの繁殖生態解明にご協力を

東京・府中市多摩川の左岸の河原を踏査中、河口から約30㎞の是政橋に差しかかると“モズの物真似鳴き”のようなぐぜり声が聞こえてきました。声の主は橋脚の陰に隠れて見えないのでしばらく待っていると奥から出てきました。イソヒヨドリの雄でした【写真上】。のど元が小刻みに震えて、小さな声で囀っていました。3月3日の日曜日朝、ランニングする大学生グループ、ジョギングする年配者、散歩する夫婦がすぐ下を通り過ぎていきます【写真下】。このイソヒヨドリ君にとってはいつもの風景のようで警戒のそぶりはありません。カメラをもって近づくと反応し、うす暗がりの奥へ引っ込むこともありましたが、少し待つとまた縁へと出てきて小声で囀っていました。  

都市鳥研究会ではイソヒヨドリの内陸部進出の意味を調べています。「生息情報」は全国各地から寄せられていますが、「繁殖・営巣情報」はなかなか集まりません。実際この鳥の繁殖期の動きをみていると、「このあたり・この建物で営巣しているようだ」というところまでは明らかにできますが、「巣がどこにある・どんな子育てをしている」ということになると追えない・調べられないことがほとんどです。

“磯にへばりついていた鳥”が市街地や郊外、山間部でというような内陸部で観察される状況が全国的に見られています。何らかの意味があることは確かでしょうが今のところは謎です。繁殖生態の解明にご協力ください。〔都市鳥研究会〕









2024年2月2日金曜日

柏駅ビルのドバト

駅ビルには、よくドバトがいます。テラスや隙間などがたくさんある大きなビルは、本来の生息地にある自然の崖と同じような構造のため、繁殖や寝る場所として利用しているのでしょう。私がよく利用するJR常磐線柏駅の駅ビルにも、数十羽のドバトがいて、ひさしにずらっと並ぶ光景が見られます。

駅ビルにドバトがいるもう一つの理由として、給餌があります。お客さんを待つタクシーのドライバーさんがドバトに餌をやる姿は、一昔前にはよく見られた光景でした。ところが、何年か前から、柏駅前ではそんな光景がすっかり見られなくなり、駅ビルにいるドバトは、だんだんいなくなるのではと予想していたのです。

現在はそれから数年は経過しましたが、予想に反して、駅前のドバトはいっこうに減ることはなく、むしろ増えているのではないかと思えるくらいになりました。それと同時に、この鳥たちは、いったいどこで食べものを得ているのだろうと疑問が生じたのです。

駅ビルにすむドバトの行動を観察していると、数羽の小集団となってどこかへ飛び去る様子が見られます。おそらく食べものを求めて出かけているのでしょう。駅から2kmほど離れたところに小河川が流れているのですが、そこでドバトを見るようになったのもだいたい数年前からです。そこでは、地面に落ちている種子を丹念に探している姿を毎日のように見ます。要するに自然にある食べものを探して得ているのです。

標識や発信器をつけて追跡したのではないので、このハトたちが駅ビルの個体とはいえませんが、その可能性高いと思っています。給餌がなくても、しっかりと自分たちの力で生き抜いているのでしょう。

ドバトの原種であるカワラバトは、ねぐらや繁殖場所となる崖と食べものの種子がある採食場所を毎日、往復して暮らしていました。その習性を利用して伝書鳩が作られたのですが、駅ビルにいるドバトたちは、現在でもまったく同じような暮らしをしてるのだなと思いました。(柴田佳秀)

柏駅ビルのドバト

河川敷でムクドリと採食する




2024年1月20日土曜日

東京都心・日比谷公園でウグイス5羽を

日本初の近代的洋風公園として知られる日比谷公園でウグイス5羽を確認しました。

日比谷公園は東京都心・千代田区の皇居外苑に隣接し、面積は16ha。音楽堂や公会堂、図書館、テニスコート、噴水池などがあり、オープン型で24時間出入り自由な空間です。

ここにいつもいる鳥は、ドバト・スズメ・ヒヨドリ・カルガモなどありふれた種類が中心ですが、冬になるとカワセミ・ツグミ・キセキレイなどとともにウグイスが定着しています。

ウグイスは東京都ではこれまでは完全な漂鳥(ひょうちょう)。市街地では冬鳥で、春先になると奥多摩などの山地へ移動する鳥でした。しかし、ここのところ徐々に繁殖分布を広げ、最近は市街地の23区でも繁殖期に生息しているのが観察されています。そのため、その美しい囀りを街なかの住宅地や公園で5月になっても楽しむことができるようになってきています。数年前には新宿御苑で繁殖期に囀りが長期間聞かれ、その後古巣も発見されたこともありました(子育ては確認されていないようですが)。

1月18日に1時間ほど探鳥したところ心字池・桜田通り沿い・松本楼の付近で各1羽、そして野外音楽堂沿いで2羽と計5羽を確認し、その写真も撮れました。【写真上】

公園はオープン型で、建物敷地以外は人が通れ、彼らが好むようなブッシュは少ないので、園内のほぼ全域に生息しているのは予想外でした。

23区内では公園などの緑地は徐々に増えていますが、彼らが好むような環境が増えたとは思えません。しかしこの事実は、何らかの“理由”があると考えざるをえない状況です。

造成されて120年経ち、都では老朽化とバリアフリーの設置を考え、10年計画で再整備を進めています。【写真下】 新しい“日比谷公園”で、どのような鳥がどう棲むようになるのか、まずは現状の鳥のようすを記録として残しておきたいと思っています。それにしても“都市鳥ウグイス”が誕生するのか目の離せない状況です。〔川内 博〕



 





2023年12月31日日曜日

『都市鳥ニュース』№35・特集「都市の水辺の鳥たちの今」を発行

都市鳥研究会の広報誌・『都市鳥ニュース』を発行しました。【表紙】『都市鳥ニュース』は毎年6月と12月に会員にPDF版をメールでお送りしているものです。

今回の特集は「都市の水辺の鳥たちの今」ということで、東京郊外の緑地、井の頭公園・石神井公園・善福寺公園の池でのサギ類やオオバン・カワウなどの繁殖のようす、また、名古屋市中心部を南北に流れる堀川での越冬水鳥相やカワウのコロニーのようすが報告されています。

さらに、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川での、1976(昭和51)年・1986(昭和61)年と2019~21(令和元~2)年の3回実施された「全流調査」を比較した報告書『多摩川鳥類カウント再現』について紹介しています。この調査は、昭和時代に建設省京浜事務所からの委託で実施された調査と、約40年後にほぼ同じ手法で実施されたものの記録が収録されていて、同じような調査を実施されている方にとっては得難いデータ集です。今のところネットにアップされる予定がなく、残部は20冊程度とのこと。その申込み先なども掲載されています。

『都市鳥ニュース』は会員以外にも希望があればメールでお送りしています。興味ある方は当会にメールでその旨ご連絡ください。〔事務局〕




2023年12月7日木曜日

イソシギが千葉県習志野市の公園の芝生で採餌

千葉県習志野市谷津3丁目の谷津公園の芝生広場で、2021年11月12日14時10分に芝生にイソシギが飛来し、採餌をはじめました。飛来した場所から南に約100メートルのところには谷津干潟があります。ちょうどこの日は業者が芝刈りをしていたので昆虫等の小動物が見つけやすかった可能性があります。

イソシギは単独で約10分採餌した後6分ほど芝生で休んでいましたが、人が近づき飛び去ってしまいました。何を食べていたかはわかりませんが、イソシギが公園の芝生で採餌しているのを見るのは珍しいので報告します。(越川重治)





2023年11月23日木曜日

“迷惑鳥”イソヒヨドリ

 昨日当会のメールボックスに「初めてメールします。イソヒヨドリのことを調べていたらこちらに辿りつきました」という奈良県在住の方からの相談が届いていました。文面は「最近イソヒヨドリが家の軒先でねぐらをとるようになった。とくに悪さはしないが、このままでは繁殖期に営巣するのではないかと心配。」そのわけは“鳥が大の苦手”でイソヒヨドリに出てってもらうにはどうすればいいかという内容でした。  

最近市街地に定着した鳥で、“幸福の青い鳥・美声の持ち主”と歓迎の声が多い鳥で、何という鳥かという質問はよくきますが、“困っている”というメールは初めてでした。しかし、当会に相談は来ていませんが、“迷惑”という話もよく聞きます。一番多いのは「自宅のマンション屋上で早朝から大きな声で鳴いてうるさい!」といったものです。次に多いのは餌をねだるなど「図々しい態度」といった行動面です。

この鳥の食性は幅広く、昆虫やトカゲ・ムカデ【写真上:餌を持ってきた雄親】などの小動物から木の実などの植物質のもの、パンやミールワームなど人が与えるもの、果てはごみ箱漁りなどもするという“悪食”の鳥〔本ブログ:2016年2月17日付〕。また、人家での営巣も知られています〔本ブログ:2015年5月13日付・当会広報誌『都市鳥ニュース』№31〕。さらに、給餌などをすると人なれし、餌を要求するような態度も取ります〔本ブログ:2015年5月14日付〕。 

“見た目と囀りが美しい”新参者の都市鳥で、繁殖記録も増えています【写真下:巣立ちビ】。ただ観察を続けていると“ちょっと心配な面”もある“海辺生まれ”の鳥ですので、今後の都市生態系にどんな影響があるか興味深いところです。〔都市鳥研究会・川内博〕







2023年11月11日土曜日

2023年秋・東京都心の緑島を通過していく鳥たち

今夏の酷暑のせいか、私がホームグラウンドとしているJR山手線内側の東京都心のフィールドでは、今年の「秋の渡り」において例年と比較して幾つかの異変が感じられました。

先ずは渡りの開始時期がずれ込んだことです。例年であれば8月中旬位からツツドリ【写真1】・ムシクイ類・キビタキ・サンコウチョウなどが順次観察されるのですが、今季は8月中の観察は皆無でした。9月に入るとともにムシクイ類が通過しはじめ、中旬にはツツドリ・キビタキ・サンコウチョウなどが通過、9月29日にはヤブサメ【写真2】も見られました。これを種別に纏めてみると、ムシクイ類では10日、トケン類では20日、サンコウチョウでは20日、キビタキ・ヤブサメは1カ月の遅れが確認されました。また、キビタキ・コサメビタキ・エゾビタキ・サンコウチョウなどのヒタキ系の通過個体数は減少が感じられました。  

渡りの中盤以降では、逆に例年よりも早く観察されるケースが見られました。例年は10月下旬頃から順次観察される冬鳥ですが、10月11日にはアオジがみられ、17日にはジョウビタキ、27日にはトラツグミが観察されました。アオジ・ジョウビタキにおいては約半月、トラツグミでは1カ月ほど早い飛来でした。

今夏のような高温が繰り返すような場合、鳥類への影響は計り知れないダメージとなるかも知れず、全国的な調査が待たれるところです。〔井上裕由〕

写真1 ツツドリ

写真1 ヤブサメ



2023年10月25日水曜日

皆さんの協力でできた・鶴ヶ島市高倉の森のカラスねぐら入り調査

鶴ヶ島市は埼玉県のほぼ中央部に位置し、東京都心より45㎞圏。かつては田や畑、雑木林に覆われていた農村でしたが、近年、自動車道などの交通網が発展し、ベットタウン化しつつある町です。2000年当初、日本野鳥の会東京が首都圏一帯のカラスのねぐらを調査していた時、東武東上線鶴ヶ島駅近くの林とこの高倉にカラスのねぐらがあることは把握されていましたが、実態を調べることなく過ぎていました。

このたび、当会会員で、坂戸野鳥観察会の富田恵理子さんの呼びかけで、「第2回 鶴ヶ島市高倉の森カラスのねぐら入り調査」が10月21日の夕方行われました。目的は“カラスが何羽集まっているの?”・“どこから飛んでくるの?”という素朴な疑問からで、当日午後3時半に集合。集まったのは、坂戸野鳥観察会、鳩山野鳥の会会員他、総勢17名。3分の2は女性で、なかには家族連れでの参加もありました。ねぐら地を取り囲むように5か所に観察者と記録者が配置され、午後4時半ごろから調査開始。ねぐら地の森からはハシブトガラスの声がさかんに聞こえてきました。

私は担当場所では当初はちらほらだった飛来が、時間が経つにつれて増え、最盛期には群れが次々と通過し、カウンターでは記録ができないくらいの状態で、目見当で20羽・30羽と記録者に伝えるほどでした。飛来は北東からで、地図で見ると飛んでくる方向には繁華な川越の街や大河川・荒川が流れています。飛来するカラスの種類は確定できませんが、当初はハシブトガラスの声が多かったのが、薄暗くなり、群れで飛来するころはハシボソガラスばかりの声でした。ねぐら地からは、ときどき集まったカラスたちが大群れで飛び立ち、そのようすから相当大きなねぐらであることがわかりました。【写真】

調査結果は後ほど発表されるとのことですのでそれを待つとして、参加されている方にごみ荒らし・人を攻撃するなどの“カラス害”を聞いたところ、特にないとのこと。東京都心部での個体数は急減し、郊外でのトラブルないということで、「社会的な大きな問題」ではなくなったようです。〔川内 博〕 




2023年9月28日木曜日

渋谷のカラス観察で驚いたこと

 9月10日に早朝の渋谷へ出かけ、カラスの観察に行って来ました。

かつての勤務地が渋谷だったこともあり、かなり慣れ親しんだ繁華街です。しかし、ここ15年ほどは足を運んでおらず、最近の様子を知りたくて出かけたのですが、想像を超える事態になっていました。

現地には5時に到着。道玄坂や東急本店通りには、日曜の朝だったので、土曜の夜から楽しんだ人達がたくさんいて、なかには路上で寝ている人もいます。私が知っていた時代の渋谷は、早朝だとさすがに人通りが少なく、閑散としていたのですが、今は、まるで昼間のように人がたくさんいるのには本当に驚きました。

日の出時刻になると、ハシブトガラスちらほらと姿を見せはじめました。しかし、なかなか地上近くに降りてきません。何故ならば人がたくさんいるからです。それでも6時頃になると路上にある生ゴミの袋に降りはじめました。驚いたことに、カラスはたくさんの人がすぐ近くを通っても、逃げるそぶりを見せずにかまわず生ゴミを漁っています。さすがにカメラを向けたら警戒するだろうと、少し離れた場所から撮影を始めました。ところがまったく気にすることなく食べ続けてるではありませんか。最後には1mくらいまで接近して撮影を続けましたが、カラスはまったくひるむことなく行動していました。

かつて、路上でゴミを漁るカラスを撮影するときは、少なくとも道路の反対側から狙わないとダメでしたが、イマドキのカラスは望遠レンズが要らないくらいの距離でも撮影が可能でした。渋谷のカラスがなぜ、こんなにも人やカメラを気にしなくなったのか。あまりにも人が多すぎるからでしょうか。それとも食べられるゴミが限られるので、気にしていられなくなったのでしょうか。カラスの心の変化が気になるところです。(柴田佳秀)

撮影していてもかまわずゴミを食べに来る

たくさんの人が通るすぐ横で食べる

カラスの世界がそこにはありました



2023年9月18日月曜日

東武東上線のムクドリの「駅前ねぐら」・第9回

2015(平成27)年8月14日の第1回以来、東京・池袋を起点とする私鉄・東武東上線の「ムクドリの駅前ねぐら」の紹介を続けています。短時間の調査で、“経過・傾向”を知るだけのものですが、行くたびに何らかの変化があって、それなりに興味をもって続けています。

今回は、夏の状況を知るために7月中旬と9月初旬に訪ねてみました。ムクドリのねぐらを確認したのは、7月は上福岡駅東口(1000羽以上)と志木駅東口(3000羽前後)【写真上】。ほかには朝霞台駅東口で100羽前後を認めただけでした。9月はふじみ野駅(1000羽以上)・志木駅東口(4000羽前後)。2つの駅ではムクドリが嫌うという“バードプロテクター”の音が鳴り響いていました。7月に上福岡駅に集まっていた群れが、従来のねぐらのふじみ野駅に移ったようです。ここのところ川越駅と朝霞台駅ではごく少数を認めただけで、ねぐら地にはなっていないようです。また、西武池袋線終着駅の本川越駅東口には糞跡がなく、ねぐらは解消しているようです。

全体的に見ると、以前のような住民や商店などとの“トラブル”が生じるような状況は、調査範囲の東上線沿線(池袋~川越市)まででは起こっていないようです。

ところで、志木駅東口には大規模なスズメのねぐらもあり、夕方、ムクドリより少し早く飛来し、駅前広場の街路樹や人家の植木に飛び込みます。その数は約2000羽。また、本川越駅東口のショッピングセンター「PePe」の高い屋根の上にはイソヒヨドリの姿を毎回確認【写真下】 “磯の鳥・イソヒヨドリ”の街なかでの定着が高まっていることを実感しています。これらはムクドリのねぐら調査の余禄のひとつです。〔川内 博〕





2023年8月29日火曜日

都市公園の池にもヒクイナ・東海地方のようす

 ヒクイナは国のレッドリストでは準絶滅危惧種となっていますが、東日本では少ないものの、西日本ではそれなりに繁殖分布していることが報告されています。私の住む愛知県や名古屋市でも準絶滅危惧種となっていますが、昔よりは減っているのでしょうが、それなりに出会う(もっぱら声のみを聴く)機会があります。越冬期にも見ることがあります。

 今年の繁殖期は、名古屋市東部丘陵のいくつかのため池を訪れる機会がありましたが、3か所のため池(図)で日中にヒクイナの声を聴きました。1か所目(図左)は都市公園に整備された元ため池(面積約0.6ha)で、池の周囲には遊歩道もあります。住宅地に囲まれ、水田からもやや離れています。ヨシ原が広がり(写真)、バン、カイツブリ、カルガモ、オオヨシキリもいました。2か所目(図中)は公園整備中のため池(面積約0.9ha)で、池の北~西には樹林が残るものの、その周囲は住宅地で、近くに水田はありません。池のかなりの面積がヨシ・ガマで覆われ、一部陸地化していました。バン、カイツブリ、オオヨシキリ、カワセミもいました。3か所目(図右)は公園に隣接する池(面積約0.9ha)ですが、池周囲は藪化して人があまり近づきませんが、西側は住宅地です。バン、カイツブリもいました。

  名古屋市内ではこの他にも、これらよりは大きなため池を取り込んだ都市公園での繁殖の記録があります。神戸市での研究では、池面積よりも湿地性植物の面積が重要だと指摘されています(渡辺・平野 2011)。繁殖期では、生息が確認された池の湿地性草原の面積は 0.28 ± 0.22haだったとのことなので、意外に小さなため池だけでも繁殖できるようですが、池がヨシ原に覆いつくされるようになると、調整池の機能が期待される池では、残念ながら浚渫工事をしなくてはという話になるようです。〔橋本啓史〕


図:ヒクイナのいた3つの池の緑被分布図。名古屋市の令和2年度緑被地GISデータで作成。左図の池は、実際には北部と南部はヨシ原に広く覆われている。



ヒクイナのいた都市公園の池



2023年8月18日金曜日

キジバトはアレチウリの“天敵”

 アレチウリは北アメリカ原産ウリ科の一年生草本で、生育速度が非常に速いつる性植物で1株当たり400~500個の種子をつけますが、25,000個以上との報告もあります。種子には休眠性があるので土壌シードバンクを形成し、全国の河川敷等で大繁茂し在来種が影響を受け一部では他の植物がほとんど生育できなくなっている場所もあり、特定外来生物に指定されています(環境省)。鳥類への影響も出ており、東京でも多摩川などのツバメのねぐら場所であるヨシ原にアレチウリが大繁茂し、ツバメがねぐらをとれなくなる例も増えており、関係団体がヨシ原保全のために駆除作業を行っています。  

 アレチウリは外来種なので、今のところ有力な“天敵”見つかっていませんでした。2021年10月11日、水元公園(東京都葛飾区)の水辺ゾーンに繁茂するアレチウリの果実を、地上で2羽のキジバトが盛んに突いているのを目撃しました。近づいて観察すると枯れた果実の中から種子を出して盛んに食べていました。【写真】 人が近づくまでの約8分で20~30個の種子を食べていたと思われます。今までアレチウリの実を食べる動物は見つかっていませんでしたので、キジバトは有力な“天敵”であることがわかりました。〔越川重治〕




2023年8月3日木曜日

ムクドリを数えてみました

 千葉県柏市のつくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅前には、2005年の開業からしばらくして、とつぜんムクドリの大規模なねぐらができて問題になっています。

ここはビルに囲まれるように駅前ロータリーにケヤキなどの樹木が植栽してあり、ムクドリがねぐらをつくる良い条件が整っています。ねぐらに集まるのは非繁殖個体で、繁殖期が終わる7月はじめには、その年に生まれた幼鳥も群れに加入して、個体数が多くなります。そして、夏から秋にかけてが最大規模になります。

柏の葉キャンパス駅前のケヤキ

先日7月4日、私はここにどのくらいの数の鳥が集まってくるのだろうと思い、調査してみました。ムクドリは日没寸前になると次から次へと群れが飛来し、めまぐるしく出入りするので正確な個体数を知るのはかなり難しいことです。そこで、大きな群れが1枚の写真に写るように撮影し、家に帰ってからパソコンで拡大しながら、1羽1羽印をつけカウントを試みました。写真を拡大して見ると鳥は意外と重なっておらず、かなり正確に数えることができそうです。その結果、4,518羽が写っていました。この写真には写っていない個体もいるので、おそらくこのときは約5,000羽がいると推定されました。

カウントした写真。4,518羽が写っていました

調査をしていて感じたのは、鳴き声による騒音もかなりの音量であり、また糞の臭いもかなりのもので、これはやはりなんらかの対策をしなくてはいけないなということです。

この場所では過去に、猛禽類の声や鳥が嫌がる音を流したり、さまざまな対策が講じられたそうですが、未だに解決には至っていません。また、天敵である猛禽類が駅前にはいないから、ねぐらができるという説がありますが、興味深いことにこのムクドリを狙ってハヤブサが飛来して捕食することがあり、どうも天敵説はあてはまらないように感じています。いったい何がムクドリを引きつけているのか、さらに調べる必要がありそうです。(柴田佳秀)

飛来するハヤブサ



2023年7月18日火曜日

マンション団地でのツミの繁殖

今年の6月初め、団地のテニスコート上空を鳴きながら飛びまわる2羽のツミを発見。場所は東京のベットタウン・埼玉県和光市の駅から5分程度のマンション団地のなか。計画的に建設されたため、高層の建物が11棟も林立する環境ですが、緑が多く図書館などもあり、各所に「広場」が点在しています。

ここでのツミの繁殖は今回が初めてではなく、5年前の2018(平成30)年7月に、同じ団地内で若鳥を見かけました。その時は巣を発見できませんでしたが、今回は抱卵・育雛・巣立ちを観察でき、巣立ちした3羽の若鳥の食事姿もとらえることができました【写真上】。営巣場所はテニスコートに隣接したジャングルジムなどを備えた子供たちの広場。巣はケヤキの高さ8メートルあたりに枝を積み重ねて造っていました。

地面から1か所だけ巣が見えるポイントがあり、その姿を望遠レンズで撮影し、状況を記録しました。大勢の人が住む団地ですので、双眼鏡や望遠鏡での長時間の“覗き”は自主規制。そのため繁殖生態はくわしくは観察できませんでした。周辺では連日オナガの群れが大騒ぎ。7月上旬に無事巣立ち。そのタイミングを計ったかのように、広場の片隅にはマンションの大規模改修のための資材置き場が建設されました【写真下】。〔川内博・桂子〕







2023年7月3日月曜日

『都市鳥ニュース』№34を発行しました

当会の広報誌『都市鳥ニュース』の最新号・№34を6月30日付で発行しました。特集は「都市のカラスたちの今・2」。興味深い記事は、前号で紹介した「春先の高病原性鳥インフルエンザ発生と市内のカラスの減少傾向について」の話から発展した、死因解明のための“クラウドファンディング初挑戦”の話で、当初の目標額の「70万円」を大きく上回る「200万円」に達したとの報告。“意義”と“やる気”があれば、資金面では世の中が味方してくれる事例として、参考になる情報です。【写真上・路上に放置されていたカラスの死体】

また、関東圏ではまだ珍しい“千羽烏(せんばがらす)”の異名をもつミヤマガラスの群れ【写真下】の観察報告は、興味ある人にとっては貴重な情報だと思います。さらに、「カラスの人工巣」の話は、社会問題となっている送電鉄塔への針金ハンガーなどによる営巣に対しての対策の一つとして、被害のない場所に人工巣を設置して、営巣を誘導する対策のようすなどが紹介されています。いずれも“都市鳥研究会”ならではの記事と自負しています。

さらに、「お知らせ」のなかの小さい記事ですが、“バックナンバーの貸出”の紹介が載っています。研究会誌『URBAN BIRDS』は、昨年通巻80号を発行していますが、そのうち通巻23号(1987年発行)~80号(2022年発行)までの冊子をA会員(有料会員)に“貸出す”という案内です。年会費2500円ですので、興味ある方はご一考ください。なお、『都市鳥ニュース』はPDF版で、B会員(年会費無料)や希望の方にはメールで贈っています。問合せ等はメールにてお願いします。≪写真:事務局提供≫  〔都市鳥研究会・事務局〕