2015年12月27日日曜日

「第7回 東京都心におけるカラスの集団塒の個体数調査(速報)」

  都市鳥研究会では30年前の1985年より5年ごとに都心のカラスの個体数を調査してきました。夕方、就眠のために集団塒に集まってくる羽数をカウントしたものです。20151219()に第7回カラス調査を山手線内の3カ所の集団塒~豊島ケ岡墓地(文京区)、明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)~で実施し、合計4808羽をカウントしました。この羽数は、ピーク時(2000年)18664羽の約1/4であり、74.2%の減少となりました。また、30年前の6727羽の水準を初めて下回り、都心のカラスの減少傾向がみえてきました。

以下は、第7回の調査結果です。

(1)各集団塒でのカウント数と3カ所の合計羽数は次の通りです。
  豊島ケ岡墓地 1607羽、明治神宮 2353羽、 自然教育園 848合計4808

(2)3カ所の合計羽数は、第6回調査(2010)に比べ37.8%の減少となりました。

  1は、「2010年と2015年の増減」を比較したものです。いずれの集団塒でも個体数が20%以上減少しました。中でも自然教育園は60.9%の激減でした。

1. 2010年と比較した個体数の増減


1. 都心カ所のカラスの集団塒における個体数変化

(3)1は、第1回調査(1985)から今回の第7回調査(2015)までの30年間におけるカラスの個体数変化を示したものです。

1985年から2000年にかけて急増しました。
2000年に個体数はピークに達しました。
2000年以降は減少に転じ、今回の調査では30年前(1985)の個体数を初めて下回りました。

(4) 7回調査には合計76名が参加しました。
76の内訳は、栃木県(1)、埼玉線(4)、千葉県(28)、東京都(30)、神奈川県(11)、静岡県(1)、愛知県(1)でした。
今後、調査結果を詳しく精査し、塒への出入りの方位や減少原因等を分析するなどして201612月発行予定の都市鳥研究会会報に報告する予定です。

 2015年12月26日(文責) 唐沢孝一、越川重治、金子凱彦




2015年12月23日水曜日

第7回 東京都心のカラスの塒での個体数調査、無事終了

都市鳥研究会で、1985(昭和60)年から5年ごとに実施しています「東京都心におけるカラスの集団塒の個体数調査」の第7回を、1219日(土)、予定していました明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)、豊島岡墓地(文京区)の3か所で無事終了しました。
調査にたずさわれた76名の方に感謝いたします。東京・千葉・埼玉・神奈川のほか、栃木や愛知からも参加いただきました。また、調査実施にご協力をいただきました関係者の皆様にもお礼申し上げます。
4回の2000年調査時をピークに、東京都心3か所でのカウント数は減ってきていますが、今回はどうでしょうか。速報値がでましたら、このブログで紹介したいと思います。
198090年代、“カラス天国”と呼ばれた東京の銀座や新宿、渋谷などの繁華街で乱舞していたカラスたちも最近は激減。マスコミを騒がすこともなくなりました。一方、全国各地の都市で、かつての東京と同じような問題が多発しているようです。


当会では、今後この問題について、広く考えていきたいと思っています。



2015年11月24日火曜日

関西地方のムクドリの「駅前ねぐら」を訪ねて  姫路駅前(兵庫県)/新大宮駅前(奈良県)

917日(木)夕方5時きっかりに、姫路城が正面に見える大手前通り〔写真1〕の街路樹のあちこちで、“ジャー・ジャー”という人工的な大きな音が響き出しました。
JR姫路駅からお城へまっすぐ延びたこの大通りに、夏から秋にできるムクドリの集団ねぐらをめぐって、2007年、“全国ムクドリサミットin 姫路”が開催されました。住民からのムクドリねぐらに対しての苦情に困った、全国の自治体関係者が集まっての鳩首だったようです。
マスコミ報道によると、大手前通りにねぐらができたのは1980年代後半のようで、それ以来の悩みの種とか。今年の5月にある新聞社から電話取材があり、その時、姫路でのムクドリ問題解決に“新兵器”が使われ、けっこう効果をあげている話を聞いていたので、神戸での日本鳥学会大会参加を機に訪ねてみました。
薄暗くなっても、大手前通りにはムクドリはいませんし、たまに小群が飛んできても、街路樹には止まらず、駅方向へ方向転換していきます。確かに新兵器はムクドリが嫌うと思われる音を出して、効果を発揮していました。しかし、駅の反対側の出口のロータリーへ行ってみると、ホテル前の街路樹でムクドリが鳴き騒いでしました。結局、彼らは嫌な音がする場所を避けて、ねぐら場所を変えただけのようでした。〔写真2〕

923日(水)イソヒヨドリ調査を終えて、近鉄奈良線・新大宮駅前についたのは午後520分。一昨年、この一帯や近鉄奈良駅前で、街路樹が丸太状に切られ、マスコミの話題になった現場を初めて見ました。2年を経て、切り口からは若枝が出ていて、事情を知らなければ、変わった形の街路樹とも見える状態になっていました。
5時半、300羽程度の群れが旋回、10分後には大群が乱舞状態となり、辺りが薄暗くなった6時前には、踏切を挟んだ道の両側の電線に、目測4000羽がずらりと止まり、騒ぎ続けていました〔写真3〕。 7時前に近鉄奈良駅前に行ってようすをみましたが、こちらは飛来していないようでした。

 全国各地の駅前などで社会問題となっている「ムクドリの集団ねぐら問題」は、今のところ解決策がないのが実情。姫路のメイン通りからムクドリを一掃したという実績を持つ“新兵器”も、奈良市民からみっともないと批判を受けるほどの街路樹の伐採も、残念ながら「にぎやかな場所がいい」というムクドリたちの強い嗜好には決定打とはならなかったようです。

 なぜそんな環境をムクドリが好むのか、こちらも残念ながら、研究者は明快な答えを出せないでいます。
川内 博)

写真1


写真2

写真3


2015年11月2日月曜日

第7 回東京都心のカラスの個体数調査(2015) 調査参加者を募集します

 都市鳥研究会(川内博代表)では、1985 年の第1 回調査以来5 年ごとに「東京都心のカラスの集団ねぐらで個体数調査」を実施してきました。今年12 月には第7 回の調査を予定しています。明治神宮(渋谷区)、自然教育園(港区)、豊島ケ岡墓地(文京区)の3 カ所のねぐらに夕方集まってくるカラスの羽数を人海戦術でカウントします。

 これまでの調査では、1985 年に6727 羽、2000 年には18664 羽に急増、その後は減少に転じ、2010年には7728 羽でした(右図)。第7 回調査ではさらに減少して30 年前の水準に戻るのか、前回と変わらないのか、あるいは再び増加傾向に転じるのか、興味あるところです。総勢約60 人の調査員で下記のように実施予定です。ふるってご参加いただきたくご案内いたします。


(1)実施予定日 12 月19 日(土)、12 月20 日(日)、26 日(予備日) 13 時(集合)~17 時(解散)
天候や参加者人数によっては12 月19 日のみで終了する場合もあります。

➀下記の事項を記し、唐沢宛メールaab87211@pop13.odn.ne.jp に申込みください。
「氏名」「住所」「電話番号」「参加可能な月日→12/19、12/20 」

②参加資格は特にありません。会員外でも参加できます。
ただし、準備の都合上、事前に参加登録をお願いします。

③申込みの締切り先着60 名とさせていただきます。

(3)調査はすべてボランティアで行います。交通費や日当は支給されません。
(ただし、高校生については交通費の補助があります)
また、参加者の保険はかけていませんので、万一場合は各自のご負担でお願いします。

(4)調査の方法
2 人一組で、分担する区域を通過するカラスの数を数えて記録します。
参加登録をされた方には、後日、調査方法や集合場所、調査の情報等をお知らせします。

(5)その他
参加者には、調査結果をまとめた会報Urban Birds 1 冊を贈呈します。
調査関係の諸連絡はすべてメールで行います。以上、ご案内致します。

2015 年10 月30 日
調査責任者 唐沢孝一(272-0035 市川市新田3-20-12)

2015年10月18日日曜日

関西地方のイソヒヨドリ・数日間行脚して―「イソヒヨドリはなぜ内陸部に進出するのか」日本鳥学会大会自由集会の報告・2

921日午前中で日本鳥学会2015年大会が終わり、私は24日夕方の関空発成田行きの飛行機に乗るまでの間、イソヒヨドリの姿を求めて、神戸・明石・大阪・岸和田・奈良・和歌山を回りました。

22日早朝、神戸港(神戸市新港町)を歩いていたら、神港貿易会館の上を飛ぶ3羽の姿と、その直後に税関本庁建物屋上に3羽の計6羽に出会いました。同日午後4時過ぎに、大阪・岸和田市の岸和田城の天守閣から一帯を見下ろすと、府立岸和田高校屋上に雌1羽を目にしました。短いセンテンスでさえずりも聞こえてきました。そこから北へと内陸部へ向かって踏査すると、JR東岸和田駅近くの大型スーパー・イオンの立体駐車場隣地のポールに止まるイソヒヨドリ雄1羽。

23日は、奈良市内を、地元の日本野鳥の会会員の方の案内で終日踏査。新薬師寺に近い戸建ての多い住宅地で声を聞き、夕方にはJR奈良駅近くの高層ビルがならぶ中の「なら100年会館」〔写真1〕で、姿は見えませんでしたが囀りを確認しました。

最終日の24日は、地元の研究者の案内で、和歌山県橋本市および高野町を車で回りました。午前中は雨でしたが、出迎えていただいた南海高野線・林間田園都市駅(和歌山県橋本市)の駐車場で、さっそく雄1羽を確認。近くの三石台中学校、柱本小学校の校舎の上で、それぞれ雄1羽ずつ。その後、中柱本で、降りしきる中で雌1羽〔写真2〕と、団地の中のスーパーで鳴声を確認。お昼にはよくいるというスーパー・マツゲンの屋上駐車場で鳴声を。午後は、これも見かけたことがあるという高野山(和歌山県高野町)へ。どんなようすかと、壇上伽藍で車から降りて数分後には、根本大塔屋根に雄1羽〔写真3〕。

観察した時間は、それぞれの場所で1030分程度という短時間で、8か所中7か所で出現という信じられない状況でした。以前見かけたことがあるという場所を巡ったのですが、繁殖期を終えた時期にこれだけ出会えるとは思いもよらなかったことです。なかでも高野山の寺院の屋根の上でとは予想もしなかったことでした。

1か月前の8月上旬に、東京・八王子市一帯の9か所の営巣場所を、同じように地元の研究者に案内してもらいましたが、その時はまったくイソヒヨドリには出会えませんでした。

919日に実施した、日本鳥学会・自由集会「イソヒヨドリはなぜ内陸部へ進出するのか・・・大阪・東京地方でのようすからその実態に迫る」で、関西地方の状況を発表された、大阪市自然史博物館の和田 岳さんの“関西では、イソヒヨドリは一般的だ”ということばを実体験した3日間でした。
現地をご案内いただいた、岩本二郎・小田久美子・粕谷和夫の各氏に感謝いたします。(川内 博)


〔写真1JR奈良駅近くの「なら100年会館」。
この建物の上部から囀りが聞こえてきたが、姿は確認できなかった。

〔写真2〕橋本市中柱本で、車の中から偶然見かけたイソヒヨドリの雌。
関西地方でのこの鳥の定着ぶりを知った
1ショット。

〔写真3〕高野山・壇上伽藍の根本大塔の屋根の上に1羽の雄を発見。
山の上のお寺の屋根で見かけるとは予想もしていなかった。

2015年9月28日月曜日

この現象の奥に何かがあるのでは? その片鱗が見えた「イソヒヨドリはなぜ内陸部へ進出するのか」 日本鳥学会自由集会の報告・1

兵庫県立大学・神戸商科キャンパス(神戸市)で開催された日本鳥学会2015年度大会で、都市鳥研究会として自由集会を、919日(土)・1830分~2030分に開きました。タイトルは「イソヒヨドリはなぜ内陸部へ進出するのか・・・大阪・東京地方でのようすからその実態に迫る」で、発表者は3人、参加者は22名。
まず、このイソヒヨドリ問題のイントロダクションとして、当会代表の川内 博氏から「イソヒヨドリの生態とその分布について」ということで、従来の生態・最近の分布、そして今何が起こっているかの概要が語られました。次いで、八王子・日野カワセミ会会長の粕谷和夫氏から、「東京都(八王子・日野)におけるイソヒヨドリの繁殖分布拡大」として、東京湾から50㎞離れた市街地でのようすが報告されました。そのなかで、営巣場所の確認がけっこう難しく、苦労をするという話が披露され、参加者の共感がありました。
発表の最後は今回の目玉、関西地方での実態を、大阪市立自然史博物館学芸員の和田 岳氏から、「関西のイソヒヨドリの内陸部での繁殖分布の拡大」ということで、大阪府での繁殖期の分布状況を中心に語られ、都心部ではまだ密度は低いが、県の南部地域では、その繁殖分布は「点」ではなく「面」とのことなどが報告されました。〔図〕
この発表には「大阪府での現状中心に ハッカチョウやムクドリの分布とも絡めて」というサブタイトルがついていて、四国・中国・関西地方に分布を広げているハッカチョウ(八哥鳥・Crested Mynah)についても現状が語られました。翌日、さっそく西明石に宿をとった会員から見たという報告がありました。海岸線沿いにけっこう高密度に生息しているようで、在来種のムクドリとの関係が、今後大きな話題になりそうです。
発表後のディスカッションでは、「岩山」を好むこの鳥が、人工の岩山「ビル」などのコンクリート建造物が多くなったために内陸部に進出してきたという、単純な発想では説明できないような事例が多数発表され、この現象が、けっこう生態学的に奥深いものを持っているという片鱗が見えたような気がします。
ディスカッションでの具体的な事例や、その“奥深さ”については、追々触れていきます。とりあえず、今後の全国調査は生息分布の変化を明らかにしていきたいと思います。この調査は「1例観察」でも参加できるという特徴を持っています。“いつ・こんなところで・なにをしていた”という報告を、下記にお寄せ下さい。
【報告先】E-mailhkawachi2dreamyahoo.co.jp 

<発信の際に★を@に変換してください>


2015年9月14日月曜日

日本鳥学会自由集会で「イソヒヨドリ」の動きをクローズアップします

兵庫県立大学神戸商科キャンパス(神戸市)で、918日~21日に開かれる、日本鳥学会2015年度大会で、都市鳥研究会では、19日夜に「イソヒヨドリはなぜ内陸部へ進出するのか・・・大阪・東京地方でのようすからその実態に迫る」という自由集会を開きます。
“磯ひよどり”が“ビル・ひよどり”になっている例が全国各地で見られていますが、その実態はということで、今回は東京・八王子と関西・大阪での状況を中心にその現状を発表してもらい、その後、各地での情報提供と意見交換を行います。
ところで、この鳥が“磯”に限定して分布していることの方が珍しい現象であることは、世界での分布図から知ることができますが、諸外国での生態も見たいものです。また、同じ仲間の、コシジロイソヒヨドリ〔写真・モンゴルでの撮影〕と分布が重なる地中海沿岸などではどんな棲み分けをしているのか興味あるところです。実際現地で見た人の話が聞ければ新展開が期待されます。

いずれにしても、今後も多くの方の協力を得て、この現象の意味するところを解明していきたいと思っています。

コシジロイソヒヨドリ(撮影地:モンゴル)

2015年8月29日土曜日

都市鳥ニュース No19号が発行されました

都市鳥ニュースNo19号が発行されました。今回はイソヒヨドリ特集です。

目次 イソヒヨドリ特集

読み物:東京における過去のイソヒヨドリの生息状況         川内 博 
ニュース:内陸部のイソヒヨドリ繁殖情報(神奈川県相模原市緑区) 朝比奈邦路
ブログ:同一の人家で営巣中のツバメとイソヒヨドリ
ブログ:「いそこさん」の話・東京渋谷発
ブログ:内陸部でイソヒヨドリを見かけたら・ご一報を! 
呼びかけ:日本鳥学会2015年度大会・自由集会のご案内
速報:東京駅を中心としたツバメ繁殖状況・第7
読み物:庭木にねぐらをとるツバメ                 越川重治
呼びかけ:第7回都心カラス調査のお知らせ(予報)
ブログ:札幌で写真展「都会に生きるカラスたち」を開催
ブログ:札幌でのハシボソガラスの「車利用クルミ割り」の現場
報告: ツミ・シンポジウムのレジュメ  植田睦之・吉田 巧・川内 博・所 建
ブログ:真っ最中!とうきょう圏のオオタカの繁殖
会からお知らせ
入会のご案内・編集後記 



     


2015年8月14日金曜日

東武東上線沿線のムクドリの「駅前ねぐら」・第1報

東京・池袋から北西・埼玉県方面へと走る東武東上線。当会の事務局最寄り駅の和光市駅はその途中にありますが、ここ数年、この沿線でのムクドリのねぐらを調べています。
池袋から和光市駅の次の朝霞駅までは、駅前または周辺にムクドリのねぐらはありませんが、その次の「朝霞台駅」はJR武蔵野線の「北朝霞」との乗換駅で、2000年代に入り3,000羽クラスのねぐらができ、増減はみられますが定着しています。
次の「志木駅」には1990年代に3,000羽クラスがあり、大トラブルが発生し、いまも1,000羽クラスのねぐらが継続しています〔写真〕。その先の2駅にはねぐらはなく、
次が「鶴瀬駅」。以前は駅前のケヤキの大木にねぐらしていたのが伐採され、いまは500mほど離れた「ダイエー」の駐輪場に3,000羽クラスが。その先の「ふじみ野駅」は、昨年10月には1万羽を数えましたが、今年8月時点では1,000羽クラス。その先2駅にもねぐらはなく、次が「川越駅」。ここはJR川越線との乗換駅で、かつては5,000羽以上を数えていましたが、今年は3,000羽程度。現在のところ調査はここまでです。〔数は、いずれも目視による推定〕

ところで、興味あることが2つ。ひとつは、今年はねぐら入りの時、いわゆる“ムクドリ玉”をつくらず、次々となだれ込むように入ること。もう一つは、同じ池袋を始発とし、ほぼ同じ埼玉県方面へと走る西武池袋線では、「本川越駅」以外では駅前ねぐらが知られていないこと。まだ調査途中なので、確定したことではありませんが、皆さんの地域ではいかがでしょうか。
(川内 博・桂子)